2009/08/13(木)病と体のベクトル
2009/08/13 21:58
10年くらい前に「天寿がん」という概念を提唱している癌研の所長さん(北川知行先生)の講演を聞いた。老いてからの癌による死は老衰と変わらない、ということです。
これは80歳代後半以降の超高齢者が罹るがんについての考え方。進行癌であると診断されたが、さしたる苦痛も無くあたかも天寿を全うしたかのように亡くなったケースをそう呼ぶ。このようながん死はもはや自然死の一つとも言えるのではないか、という提言なんだって。
高度に歳を取った人のがん死は寿命と見分けがつかない
私は専門家でないので医学的根拠はないですが納得できる事象です。
これ、もしかすると癌以外にも言えるのではないでしょうか?
通常、体は「生きよう」としているわけで、そこへ病が「死」へ向かわせようとすれば逆向きのベクトルが衝突し、体と病が戦争のようになってしまいます(実際体内はミクロの戦いでしょう)。
しかし、老齢になれば体は自然と死へ向かうはずです。病も同じように体を死へ向かわせるとすれば、ある意味ベクトルが揃うわけで、病と体が足並みを揃えてゆったりと死へ向かうことができるのかもしれません。
となれば老齢者に対する延命治療というのは、せっかく揃っているベクトルに無理矢理逆のベクトルをぶつけているようなことになるわけです。わざわざ争いの種を蒔くというのでは単に苦痛を増やすだけになってしまいます。
延命治療についてはいろいろ言われていますが、個人的には安らかでいられるのが一番だと思います。もちろん、克服できれば一番いいのですが、体が向かおうとしている方向に逆らわないような見極めができるといいのではないでしょうか。
うちの父も健康法として「自分の体と相談すること」とよく言っています。死に関わるような大きな話でなくても、自分の体が何を欲しているのか、日頃から知っておくことは大切ですね。専門家の意見に頼りすぎるとかえって自分の体がわからなくなったりもするものです。
いずれにしろ記事の内容は興味深い話でした。このあたりの話が医学の分野でもっと進むことを期待します。